白いてふてふがおりまして、赤い花に止まりました。
てふてふは、その赤い花の色に一目ぼれしてしまい、その色が欲しくなりました。
てふてふは、赤い花に話しかけます。
そこの赤いお花さん、どうかひとつ、あなたの綺麗な赤い色を私に分けてはくれないかい
私は、あなたのその赤い色に一目ぼれしてしまったのだよ。」
赤い花は、答えます。
「てふてふさん。あなたには、この赤い色が綺麗な色にでも見えるのかい」
「勿論、そう見えるから、言っているのだよ。その情熱的な色、もしも私がその色を纏って、この空を飛んだのならば、ほかのてふてふたちは、私以外目に入らなくなるだろうね。」
赤い花は、少し黙ったあと、答えました。
「つまり、あなたは私のこの赤い色を纏って、人気者になりたいのだね?」
白いてふてふは、鼻をふん、と鳴らして言いました。
「率直に言うと、そんなところだね。何たって、美しい色じゃあないか。」
赤い花は、答えます。
「では、この色を纏うならば、どんな事でも受け入れるかね?」
「ああ、もちろんだとも。その綺麗な色に敵うものなんてないからね。」
「では、この色をあなたにも与えよう。」
赤い花はそう言うと、自分の身体から生えている棘を、てふてふの身体にぐさりと突き刺しました。
途端に、白いてふてふの身体から血が噴出し、白い身体は真っ赤になりました。
てふてふは、叫びました。
痛い、痛い。なんてことをするんだ。」
赤い花は、そんなてふてふを冷たい目で見ながら言いました。
「私の名前は薔薇と言うのだよ。自分の身体に生えている棘が刺さって、真っ赤になってしまった。それを、あなたは綺麗だと言った。私の傷をあなたは綺麗だと言ったのだよ。」
てふてふの身体は、血まみれになり、空を飛べなくなりました。
だんだん、意識が遠のいていきます。
どこからか、赤い花の声が聞こえてきます。
「どうだい。傷の色は。気に入ったかい。綺麗で、情熱的な、真っ赤な血の色は。好きなのだろう?」
てふてふは、そのまま地面にひらりと舞い落ちて、死にました。
一年が過ぎて、てふてふの死んだ場所から、真っ赤な花が咲きました。
綺麗で、情熱的な、真っ赤な色でした。